訪日外国人が日本の旅行で最も困ったことTOP5:リアルな体験談も大公開!

Hitomi Kuroda

新型コロナウイルスの水際対策が本格的に緩和され、訪日外国人数は過去最高のペースで増加していることが、日本政府観光局の調査で発表されています。

訪日外客数(2024年7月推計値)7月︓3,292,500人、2か月連続で単月過去最高を記録

引用元:訪日外客数2024年7月推計値(2024年8月21日発表)| 訪日外客統計|日本政府観光局公式サイト

このインバウンド需要に対し、外国人観光客が抱えるさまざまな課題も浮き彫りになっています。日本人が気づけない思わぬところで、外国人観光客にとって困る問題が発生していることは少なくありません。

そこで、Tokyo CheapoのWebサイト上でアンケート調査を実施し、外国人観光客が日本を訪れて旅行するときに最も困ったこと(困難と感じたこと)は何かを調査しました。アンケート調査の結果のTOP5を発表します。

日本の旅行で最も困ったことTOP5

参考:Fast Train Mediaのユーザーアンケート調査結果によるグラフ|調査期間:2024年7月8日〜7月26日

Tokyo CheapoのWebサイト上でユーザーに「日本の旅行で最も困難だったことは何ですか?」と質問したところ、325人の回答がありました(調査期間:2024年7月8日〜7月26日)。最も困難さを感じて困ったことの第1位は「言語の問題」。グラフと以下に、アンケート調査結果のTOP5のみのシェアを示しています。

    1位:言語の問題 43%
    2位:レストランやツアーなどの予約 19%
    3位:交通機関 18%
    4位:支払い手段 10%
    5位:インターネットの接続環境 10%

具体的にどのような問題が発生しているのか、ユーザーが実際に困ったというリアルな声と体験も紹介します。

1位:言語の問題

アンケート調査で「言語の問題で困った」と回答したユーザーはなんと約43%。
多言語でのサービスや案内は増えつつありますが、日本語が全くわからない外国人にとって、言語の壁は依然として大きな障害であることが分かります。

外国人が英語で日本人に道を尋ねたとき、たとえ英語がわからなくても、日本語で丁寧に教えてくれることに感動する外国人観光客は少なくありません。

一方で、一般的に日本人は英語で話しかけられることや、英語で話すことに抵抗感を感じる人が多いのも事実です。英語や多言語で対応できる環境が整っていない場所も少なくありません。

例えば、南アフリカ出身で日本在住のAさんの家族が、母国から日本を訪れて旅行したとき、こんなことがあったと言います。

「母と妹が日本を旅行したとき、飲食店や宿泊施設などで食事する際、何を食べているのかよくわからず食事していたことが多かったようです。例えば、ある旅館で妹が『味噌汁がおいしかったわ』と言いながら、空になった天ぷらのつゆの器を置きました。実際には、お味噌汁には手をつけていませんでした。(南アフリカ・女性)」

Photo by Carey Finn| Kanazawa seafood meal

初めて日本を訪れる外国人にとって、お味噌汁や天つゆなどの日本の食文化は理解しづらいものです。しかし、英語でお味噌汁や天つゆの説明をしている飲食店は、一般的に少ないでしょう。

日本の文化は西欧の文化とは大きく異なります。さらに言語がわからないとなると、困るシーンは日本人が想像する以上に多いことが分かります。

2位:飲食店やツアーなどの予約

次に、アンケートに回答した18%のユーザーが飲食店やツアーなどの予約をするのが困難と感じたと回答しています。

予約の方法が電話しかないお店は、まず外国人観光客は予約できないので直接来店するしかありません。

また、予約の問題については、飲食店やツアーだけに限りません。例えば、以下のような報告がありました。

「大阪で『少年ナイフ』のコンサートを見たかったのですが、日本国外からはチケットを予約できませんでした。日本に到着後、コンビニエンスストアのチケット発券機で予約しようとしたのですが、その機械は日本語のみの対応でした。しかも、すでに遅すぎてチケットは売り切れていました。(ニュージーランド・男性)」

飲食店やツアー予約などをOTAやWebサイトでオンライン予約できたとしても、サービスによっては、コミュニケーションが取りづらいツールもあります。

変更やキャンセルはよく発生しますが、コミュニケーションが取りづらいツールの場合、連絡が取れないなどのトラブルが生じる可能性があります。

例えば、数週間前に予約しなければならない体験ツアーや美術館などがあります。予約から当日までの期間があまりに長いと、旅の予定が変わる可能性もあるので、外国人観光客のキャンセル率は高くなる傾向にあります。

また、外国人観光客側のキャンセルだけでなく、ツアー会社側のキャンセルが発生することもあります。例えば、予約を受け付けた後で、ツアーの実施が難しくなり、キャンセルすることがあります。

さらに、予約システムの在庫管理上の問題などで、ツアーの空き状況を確保できない場合や、手配が不十分な場合に、予約してもキャンセルになることもあります。

3位:交通機関

日本は世界でも優れた交通システムがあると、訪日外国人の間でも高く評価されています。

一方で、東京・大阪・京都などの大都市では、人が多く混雑しており、電車の線も多く複雑で、駅の案内が難しいという声があります。回答者の18%が交通機関の利用で困難を感じたと回答しています。

駅や電車で困ったこと

複雑な日本の鉄道システムに混乱する外国人観光客は少なくありません。例えば、東京には2つの地下鉄システム、JR線、7つの主要な私鉄、新幹線があります。

さらに、新幹線のチケットには「特急券」と「乗車券」があり、この2種類のチケットの取り扱いが混乱を招いているのです。

例えば、外国人観光客から「Suicaカードを取得すべきか、JRパスを購入すべきか?」と聞かれることが少なくありません。おかしな質問だと感じるかもしれませんが、この質問から、日本の鉄道システムを理解していないことが分かります。

日本を初めて訪れる外国人旅行者にとって、乗車券と特急券の両方を購入しなければならないことは理解しづらいのです。

駅や電車の中で困ったことの、具体的な意見をいくつか紹介します。

「家族で旅行したとき、娘はスマートフォンを持っていなかったので、アプリのモバイルSuicaを使えませんでした。また、私はiPhoneを使っており、妻はAndroidを使っていましたが、日本国外で販売されているAndroid端末は、FeliCaに対応していないため、PASMOやSuicaのアプリを使用できませんでした。そのため、JRの主要な駅に行ってパスポートを提示し、物理的なSuicaカードを取得しなければなりませんでした。(オーストラリア・男性)」
「特に出口が多い駅では、迷いがちでした。エレベーターのある出口がホテルに最も近い出口とは限らないので、スーツケースなどの大きな手荷物があるときは特に大変でした。(オーストラリア・女性)」
「視覚障害者の父親との旅行は最大の困難でした。彼は改札を通るのも苦労し、私達は彼を押して改札を通過させました。特に駅員さんがいない改札では困りました。混雑した電車の中での移動も非常に困難で、障害者席に座っている人達がいて、障害者である父のために席を空けてくれなくて大変でした。(イギリス・女性)」

外国人に限らず、日本人でも「障害者に配慮した設備の整備が不足している」と課題を感じることはあります。

また、個々の意識は、社会全体の質を判断される重要な要素です。海外から訪れる人達に日本人に対する不信感を抱かせたり、不快な気持ちにさせたりしないよう、配慮する意識を心がけたいものです。

タクシーがつかまらなくて困った

電車の問題だけでなく、タクシーについても問題を感じているという意見がありました。

「タクシーがつかまらなくて困った。外国人の旅行者はタクシーをつかまえるのが難しい。(オーストラリア・女性)」

まず、これにはいくつかの要因が考えられます。一つは、タクシー業界の深刻なドライバー不足の影響です。

さらに、この問題に関連し、日本の交通機関で「不便」と感じる原因の一つに、アメリカの「Uber」や、東南アジアの「Grab」のようなライドシェアサービスが、日本では解禁されていなかったことも要因の一つと推測されます。

2024年4月に「自家用車活用事業」(日本版ライドシェア)と「自家用有償旅客運送」(自治体ライドシェア)が開始されました。しかし、問題視されていることも多く、普及しているとは言えない状況です。

さまざまなメディアで、この問題は取り上げられていますが、例えばYahoo!JAPANニュースでは、専門家の意見を始めとし、各メディアが指摘する日本版ライドシェアの普及が難しい理由を紹介しています。日本版ライドシェアについては課題が多く、難航しているようです。

今後、日本版ライドシェアはどのような方向に向かっていくのか、注目が集まっています。

もう一つの問題は配車アプリです。日本人の間で認知度が高いタクシー配車アプリ「GO」は、外国人観光客もアプリをダウンロードして利用できます。

しかし、多くの外国人観光客はそのアプリの存在を知らないのです。

「GO」のアプリは日本人の間では人気でよく使われているので、なおさら旅行者がタクシーをつかまえるのが難しくなっているのかもしれません。

4位:支払い手段

現在、日本ではPayPayなどのキャッシュレス決済が普及していますが、海外は日本と比べてキャッシュレス決済の割合がもともと高く、デビットカードやクレジットカードでの支払いが一般的です。

キャッシュレス決済が日本でも普及していると言っても、今でも現金のみの利用しかできない場所は少なくありません。

また、クレジットカードの利用は「○○円未満の支払いは現金のみ」などと、お店側が最低利用額を設けている場合もあることから、以下のような意見は少なくありません。

「海外では、1ドルのわずかな金額でも、クレジットカードで支払えることが一般的なので、日本ではそれができないことに不便を感じる。(オーストラリア・女性)」

ちなみに、PayPayは日本の決済サービスです。海外の決済サービスとの提携により、アジアの一部の国や地域のスマホQR決済が利用可能になりましたが、一般的に外国人観光客はPayPayを使用できません。

なぜなら、PayPayを使うには、まずPayPayアプリをダウンロードして、本人確認のために、SMS認証ができる日本の携帯電話番号がないとアプリが使えないからです。

アメリカやヨーロッパなどからの旅行者は、VISAやMastercard、American Expressなどの国際クレジットカードを主に使用しています。

クレジットカードの利用ができないことで、交通機関を利用する際に困った経験など、具体的な報告が多数ありますが、一部を紹介します。

「スマホのモバイルSuicaを使う際に、iPhoneのアプリ「Apple Wallet」のクレジットカード決済で入金(チャージ)したかったけど、できませんでした。海外発行のクレジットカードは、使えないみたいです。(アメリカ・男性)」
「オーストラリアのクレジットカードでスマートEXで新幹線のチケットを予約できませんでした。(オーストラリア・女性)」
「JR北陸パスを購入する際、購入に使用した物理的なクレジットカードの提示が必要でした。しかし、オーストラリア(おそらく他の西欧の国も同様に)では、多くの人がスマートフォンの決済アプリ「Wallet」を使ってクレジットカードで支払いを行っているため、物理的なプラスティックのクレジットカードは持っていませんでした。その結果、パスを発行してもらえませんでした。(オーストラリア・女性)」

東海道・山陽・九州の新幹線のネット予約サービス「スマートEX」で新幹線のチケットを予約できなかった問題については、Tokyo CheapoのYouTube動画「Where and How to Buy Shinkansen Tickets: Online and Ticket Machines(新幹線チケットの購入方法)」にも同様のコメントが多数ありました。

「スマートEX」では海外で発行した国際クレジットカードでの問題が頻発しているようです。

物理的なクレジットカードを持っていないのは、稀なケースかもしれませんが、若年層はスマホのアプリ「Wallet」を使うのが一般的になっているので、稀に物理的なクレジットカードを持って来ない人がいることも考えられます。

5位:インターネットの接続環境

数年前までは、日本はフリー(無料)Wi-Fiでインターネットの接続がつながる場所が、海外の先進国と比較して少なく、接続環境が良いとは言える状況ではありませんでした。

しかし、今はSIMカードやプリペイドSIM、eSIMなど複数の選択肢があり、日本でのインターネットの接続環境はかなり良くなりました。

2019年以前は、日本でのオリンピック開催に向けてフリーWi-Fiの設置が盛んでした。その時期と比較すると、eSIMの登場でインターネットに接続する手段の選択肢は増えました。

一方で、フリーWi-Fiは今でも利用割合が高く、多くの外国人観光客にとって必要な手段ということがアンケート調査からも分かります。

フリーWi-Fiの設置は、導入コストや維持費がかかるため、設置できていない事業者や自治体が今も少なくないので、どこでもフリーWi-Fiがつながる海外の国と比較すると、不便を感じることがあるようです。

例えば、東京メトロはフリーWi-Fiの契約を終了しました。

また、多くのコンビニエンスストアでは、コロナ禍中にフリーWi-Fiの提供を終了しました。

ちなみに、フリーWi-Fiだけの問題だけでなく、「5Gがつながる場所が少ない」という不満の声もあります。インターネット接続についての課題は、今も少なくないようです。

その他の意見

出典:iStock / Getty Images Plus/kuppa_rock

TOP5で紹介した問題の他にもリアルな声があるので、いくつか例を紹介します。

「新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比較して、ホテルなどの宿泊施設の料金が高くなって困った。」

海外の異常なインフレと比較すると、日本は物価が安いという意見もあります。一方で、旅行に必須の宿泊施設が高くなったことに対する不満の声は少なくありません。

また、日本の体験の一つに「温泉」がありますが、ノンバイナリーやトランスジェンダーからの視点で、次のような意見があります。

「ノンバイナリーの人々は、男性用浴場も女性用浴場も、あまり快適に利用できないことが多いです。自分の性自認に沿って男湯や女湯を利用する人もいますが、浴場の利用に不安や心配を感じるトランスジェンダーの人々がたくさんいます。」

ノンバイナリーやトランスジェンダーの人にとっては、温泉や銭湯は困難を感じている人は少なくないようです。

多くのLGBTQ+の人々は、貸切風呂を選ぶことが安全で理想的と考えているようです。
Tokyo Cheapoでは、LGBTQ+フレンドリーな温泉、貸切風呂なども紹介しているのでご覧ください。
参考:All-Gender Hot Spring Guide

最近は、日本でもトランスジェンダーについての関心が寄せられていますが、さまざまな視点からの配慮や情報も必要です。

まとめ

訪日旅行の需要が増加する中で、訪日外国人が直面している問題を理解し、さまざまな視点から、安心して日本を旅行できるような環境を整えることや情報提供が求められています。交通機関の問題はすぐに解決するのは難しいかもしれませんが、言語や予約システムの問題に関しては、改善の余地が多く残されています。今後、これらの改善策を講じることで、旅行者の満足度を高め、より良いサービスを提供できる可能性があると言えるでしょう。

当社が運営する訪日外国人向けWebサイトTokyo CheapoとJapan Cheapoでは、日本を旅行する外国人が直面する問題や課題を解決するための役立つ情報を提供しています。インバウンド観光市場でのビジネスの促進方法について、何かご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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