到来する東京の観光ピークの乗り越え方

Greg Lane

観光地である浅草に久し振りに行ってみて驚いたことがある。見た目が明らかに外国人である観光客は、今は「Welcome to Japan!」という暖かい掛け声で迎えられ、英語で書かれた観光メニューやら、人力車のツアーをすぐに勧められる。外国人観光客は数年前までは国内の観光客と比べるとあまり好まれず、言葉の壁もあり、無視されていた日々が懐かしい。今、日本の観光のメインターゲットは外国人へと移行している。

日本政府観光局によると、2016年の訪日観光客は2400万人以上であり、3.75兆円、日本経済に貢献してくれた。5年前、福島の大震災と津波の影響で訪日観光客が600万人程度しか来なかった時と比べると天と地の差である。この調子だと訪日ブームはまだまだ伸びそうな予感がする。

観光のピーク

日本に来る観光客は減っていないが、観光客が増えた事が「体験」のクオリティに悪影響が出ているように若干感じる。浅草寺まで続く浅草の仲見世商店街はまるで新宿駅の中央線ホームのような込み具合だし、奇抜なファッションリーダーが集まるともてはやされた原宿の竹下通りは今90%が外国人観光客で溢れかえっている状態になってしまい、クレープと微妙なお土産品ばかりが並ぶようになった。残念ながら、築地市場や新宿ゴールデン街も似たような状態である。そして三鷹にある宮崎駿のジブリ美術館なんかも2ヶ月ほど前に予約をしないと入れない状態になった。地元の方達、特に京都という観光メッカが地元である人達は現在の訪日観光ブームで頭を悩ましているという記事が最近掲載された。(ただし、何か不満がありませんか?というアプローチをしたら誰かが何かしら文句を言うのは当たり前である。)そして、観光客の人数が増えても民泊のスタンスも日本では未だに若干グレーゾーンのままだ。

Pic by Greg Lane

2400万人の観光客というのは多い人数に聞こえるかもしれないが、実は世界の観光スポットのトップであるフランスでは特に観光ピークというわけでもないのに2015年に8450万人もの観光客が訪れたといわれているので、そう考えるとまだまだ伸びるポテンシャルはあると考えられる。それでは、もし日本に更に大きな観光のピークがきたらどうなるのだろう。日本にはまだまだ観光地としてのクオリティの高さが維持されている場所が少ないように感じる。特にアジア圏外の観光客からすると、日本といえば「東京」「富士山」「京都」「広島」といったところぐらいだ。初めて日本来る人たちはこのような「お決まり」のスポットを述べるだろうが、それ以外には案外述べられない。

Tsukiji Market

観光ラッシュの解決法

大規模な地震やその他の自然災害、もしくはミサイル攻撃など受けないかぎり、訪日観光客の人数は近い将来は伸び続ける可能性が高いだろう。増え続ける中国人観光客、そしてまだこれから日本に来たいという海外人達の人数を考えるとこの業界は潤った状態がしばらく続くだろう。しかし、観光、いやツーリズムとは、どれだけの人数が訪れたかだけが全てではない。それは国際化を支援するものであり、他国に好感を持って迎えられ、外交に有利に働く「ソフトパワー」をどう最大限に活かすかというテーマに繋がっている。質の高いおもてなしや観光の体験を提供することが、より観光業界の継続力を左右するものとなるだろう。

東京の強みを活かす

今まで、海外から来た観光客が楽しめることは、元々は国内観光客用だった内容を押し付けているようなものが多かった。そう、「観光客用に作られた内容」というのは皆、避けたく、できるだけ現地の人と交わるリアルな体験を求めるからである。だからこそ、日本の文化や歴史とルーツがある内容はいつでも人気があるが、実はその他にも新たに魅力的と捉えられる内容はまだ開拓できるのではないだろうか。
日本に在住する外国人や日本人はどうかと思っても、最近作られて人気を集めるアトラクションはある。例えば、今は国内外で知られるロボットレストラン。5年過ぎた今も人気が衰えない。あと、都内でも沢山見かけるマリカー。その他に、衣装である兜を着て、写真も撮れる歌舞伎町のサムライミュージアム。そんなことならいっその事、「日本の文化が一度に楽しめるスポット」なんていうのはどうだろう?相撲のマワシを試したり、お餅をついたり、太鼓のレッスンを5分間、全て同じ場所で提供してみたらどうだろう。

Tomioka Hachiman Shrine, Fukagawa

そして、東京の下町エリアにはまだまだポテンシャルがあるように感じる。具体的に場所を挙げると、深川と墨田エリアである。アトラクションを一カ所に集めて、そしてお互いにメリットがあるように宣伝していくことで、観光客にも人気が出る可能性がある。清澄・深川エリアにはすでに清澄庭園、深川江戸美術館、東京都現代美術館、深川不動・富岡八幡宮がある他、東京でも最も美味しいコーヒーショップが多く立ち並んでいる。週末に行ってもエリアに観光客はまだ少ない。工夫を加えれば、まだ開拓できるこのようなエリアが東京にはあり、新たに開拓されることで現在注目を浴びすぎているエリアへのプレッシャーも減らすことができるだろう。

奥地や田舎をプロモーションするという手段

日本での観光ビジネスのポテンシャルは東京だけでなく、経済的にも伸びていないうえ人口も少ない「日本の地方」ではないだろうか。もちろん、完璧ではないかもしれないが、日本の伝統的な文化がまだ沢山残っているエリアのことだ。建築、文化、自然の他、16世紀に建てられたお城がまだあったり、何千年も続いているお祭りがまだ行われていたり、山奥に美しい峡谷があったりするのが日本の奥地、日本の田舎だ。

日本の田舎は、まだ多くの外国人にその価値が認識されていない。温泉に入る猿がいる、富士山の前を横切る新幹線、震災後に核問題が起こっている事くらいしか、日本の田舎にまつわるイメージはない。東京以外の日本の田舎で起こっていることは、これくらいしか海外の人には伝わっていない。日本の田舎の良さをより知ってもらうためには、もっとイベントを活用したマーケティングが必要なのかもしれない。日本には既に苗場のフジロックなど(残念ながら忠実に「苗場ロック」でないが)あるし、その他にも国際的な連中が魅力的だと思うイベントができるのではないか。オリンピックほど大きなイベントではなくても良いと思う。既にあるネブタ、七夕、阿波踊りなどは素敵だけれど海外からの観光客にとっては、国内の人達が何ヶ月も前からそのエリアのホテルを予約していて埋まっているし、なかなか入り込めない部分があるので、それでもないと思う。例えば、「国際SUSHI祭り」なんていうのはどうだろう?世界中のお寿司の食べ方などを持ち寄せて、一週間楽しいお祭りを開いてみるアイディアなんてどうだろう。

他にも色々と対策はあると思うが、大手企業が既存のやり方で進めていくよりも、海外の観光客の意見に耳を向けて、本当に魅力的な内容をよく考えていくことが必要なのかもしれない。

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